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2024/06/17

<ライブレポート>Eve、初のアジアツアー【Culture】最終公演で魅せた驚異の一体感

 国内アーティストが続々と海外ツアーを繰り広げる2024年。アニメ『呪術廻戦』主題歌「廻廻奇譚」の世界的ヒットで知られるEveが、初のアジアツアー【Eve Asia Tour 2024「Culture」】を行った。

 最強のライブだった。会場は、4月に完成した新たなアリーナである横浜BUNTAI。鮮烈にスタイリッシュな映像と溶け合うスペクタクルなテンションとスピード感。途中、Eveは客席近くへ歩み出すなど、オーディエンスとの一体感ある距離感の近さを感じるライブハウス感覚のエモーショナルなステージとなった。

 全公演ソールドアウトとなった本ツアー。香港、ソウル、シンガポール、クアラルンプール、ジャカルタ、台北と巡った最終日が6月9日の日本公演である。会場の横浜BUNTAIとは、かつて横浜文化体育館と呼ばれたべニューで、Eveとはアルバムやツアータイトルで“文化”のキーワードで繋がることに気がつき、開演前からワクワクする。

 定刻過ぎに暗転すると、Eve率いるバンドがステージに現れ「帰ってきたぜ!」と第一声。アジアツアーからの帰還を告げ、3月に配信リリースした「インソムニア」を完成したばかりのミュージックビデオとシンクロするオープニングで、オーディエンスを驚かせた。本ミュージックビデオは、Eve作品ではお馴染みのクリエイターであるまりやすが制作。本公演終了後にYouTubeで公開されている。

 続いて、赤い照明が瞬き「ファイトソング」。巨大なLEDモニターには、アジアツアーに合わせて再構築された多言語仕様の歌詞がグラフィカルに展開していく。間奏での楽器隊のセッションが熱い。アジアの土地で温かく迎えられたツアーの成果が、スキルフルかつエモーショナルな演奏からひしひしと伝わってくる。

 今回のライブは初のアジアツアーのファイナルだったこともあり、アルバムの世界観やリリースと連動したものとは異なる。結果的に、Eveが素直に今やりたいことが凝縮した選曲であり内容となった。

 見どころはたくさんあったが、淡い青色のギターソロが静かに会場に鳴り渡り、聴き覚えのあるリフからドラマティックに展開する人気チューン「トーキョーゲットー」がやはり胸に突き刺さった。さらに、アタック音が響くイントロダクションから会場中が一体化していく「アウトサイダー」への怒涛の展開。そして、オーディエンスへ寄り添うように歌唱される「黄金の日々」でのメランコリックな音像にも惹かれた。心の奥底へ触れるような繊細なナンバー、そして廃墟のような退廃的な世界観。対照的に浮かび上がる花が咲く映像美とともに「fanfare」へ移り変わっていく。

 ここで、Eveが「アジアツアー、一番の声出してくれ。行けるか?」と超満員のオーディエンスへ問いかけた。怒涛の盛り上がりをみせる「ナンセンス文学」、そして「ドラマツルギー」へ畳み掛けるように歌いつむぐ、ハイスピードに展開していくギターサウンドが豪快に鳴り響くビートロック。さらに、世界が崩壊していくかのような赤い映像。バンドによる演奏から、ラストスパート「アヴァン」、「廻廻奇譚」へ。ヒリヒリとした空気を切り裂く極上のロックサウンド。勢いそのままに「ぼくらの」では、現実と作品世界が溶け合うようにスパークしていく。

 そして、本編ラストに歌われたのは「退屈を再演しないで」。シティポップなセンスも感じられるナンバーを爽やかなプレイ。ここまでで70分ぐらい経ったのだろうか。時間感覚が溶けていく、まったく飽きさせることなく一気に駆け抜けていった、圧巻のライブとなった。

 アジアツアーを経て、Eveはよりライブの核心とは何なのか、表現の根源とは、その核とは?と自分自身やバンドと向き合いながら、アイデンティティを研ぎ澄ましていったのだろう。

 ざわめきのおさまらない、横長に広い完成したばかりの新しい匂いがするアリーナ、横浜BUNTAI。鳴り止まないアンコールに答えて、Eveが再びステージへ。「心予報」をハンドマイクでポップに歌唱。緊張の解放、キラキラした空気感で会場中が満たされていく。

 超満員のオーディエンスを見渡しながら「今日はアジアツアー最終公演ですが、僕が戸惑うぐらい盛り上がって、熱量をぶつけてもらって今すごい心が元気です。アジアツアーではいろんな文化に触れて、最初から最後までサビだけじゃなくて頭から最後まで大合唱してくれたり、開演前から熱唱してくれたり。それだけじゃなくて、ライブ前にお祈りしたり、いろんな習慣に触れてきました。アジアツアーは1か月前に始まって、今日を迎えることができました。でっかい会場なんですけど、こんな近さで最近ライブをやってこなかったので……物理的にも近くに行きましたけど(笑)、みんなの顔が見れて楽しいです。本当にどうもありがとう!」と、思いの丈を語った。

 そして、「君に世界」ではオーディエンスがスマホのライトを自発的にオン。切なきメロディーとともに心にじわっとセンチメンタルな感情が溶け合っていく。

 ラストにもう一度、Eveが語り始めた。

 「どうもありがとう! あっという間に終わりまできちゃいましたけど、みんなが聴いてくれていることを実感します。今回アジアツアーをまわって、性別も国籍も年齢も違う人たちが、距離が離れていても音楽で繋がることができて。思ってはいたけど、実際に足を運んでライブをしてみてより強く感じることができました。追加公演で夏に有明アリーナがあるので、めちゃくちゃ暑い季節ですけど、また遊びにきてください。もう一曲やっていいですか? 全部出していけますか?」

 ハンドクラップ鳴り響く人気チューン「お気に召すまま」でオーラスを迎えていく会場。ポジティビティでいっぱいのフロアに発射される銀テープ。こうしてアジアツアーは大団円を迎えた。

 満面の笑みでライブ後、ステージからグッズを客席へ投げ込むEve。「また夏に会いましょう!」本ツアーは“文化”をタイトルとしてリニューアルし、8月20日・21日に有明アリーナにて追加公演の開催も発表されている。アジアツアーを経て、Eveの大躍進はまだまだ続いていく。


Text:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
Photo:Takeshi Yao


◎公演情報
【Eve Asia Tour 2024 追加公演「文化」】
8月20日(火)東京・有明アリーナ
8月21日(水)東京・有明アリーナ

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